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061 一粒ではなく、1本300メートル? [技術と表現の進歩]

061 100年前、それは映画の分岐点-①

     長尺フィルムが映画づくりの基準を変えた

1906パリ デパート開店.JPG
●時代背景 パリのデパートオープン風景 1906
 

 昔、「一粒300メートル」というキャッチフレーズがありましたね。
え、今も? でも、残念ながら今回の話は「グリコ」とはぜんぜん関係ありません。

「映画の魅力は、フィルムの長さに比例する」……短い映画はつまらない。長い映画は面白い…と言ったら、「では、長ければいいのか」と反論されるでしょうね。問題は中味ですから必ずしもそうとは言い切れないと思いますが、少なくとも1900年代の初めには「たった1分じゃつまらない。さすがに20分の映画は面白い」と言えたのです。


●自然に定まった規格が、変わる時がやって来た

映画発明者の栄光を手にするために欧米の科学者たちがせめぎあっていた19世紀末の1889年。エディスン研究所のウィリアム・ディクスンは、映画の撮影にジョージ・イーストマンが開発したセルロイド製ロールフィルムを使うことを考えました。

ウィリアム・ディクスン.JPG 35ミリフィルム ディクスン.JPG
●35ミリ映画フィルムの規格を開発したウィリアム・ディクスン

 イーストマンの工場では17メートル(55フィート)のフィルムベース(生地)しか作っていなかったので、ディクスンはそれを35ミリ幅に裁断してもらいました。生フィルムですから、撮影するときに引き出す始めの部分(リーダー)と終わりの部分(トレーラー)は感光します。そのため、使える長さは実質16メートル弱、ほぼ50フィートでした。

撮影と映写は手回しのクランク操作で、スピードは116コマという速さがようやく確立したばかりで、50フィートの撮影・上映時間は約1分でした。撮影機や映写機は17メートルのフィルムを使うために作られ、現像やプリント(コピー)の機械も17メートル仕様でした。1作品約1分という映画の長さはこうして初期の映画を規定しました。

 「映画とは一つの情景を1分間見続けるもの」と、作る方も見る方も信じて疑いませんでした。この認識は映画が誕生してからなんと10年も続いたのです。その間、映画会社同志がお互いに真似っこして作った、似たようなフィルムばかり見せられていた観客は、次第にうんざりして不満を覚えるようになりました。

ヴァイタスコープ.JPG
●19世紀末、エディスン社「ヴァイタスコープ」の上映風景


●フィルムを制するものは映画業界を制する

 フィルムを開発したイーストマン・コダック社は、35ミリ映画フィルムの規格が定まったことで将来が大きく開けました。そしてその規格をそのまま、開発中の小型スチルカメラに流用することを考え、長尺フィルムの開発に力を注ぎました。

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●ジョージ・イーストマン/イーストマン・コダック社/小型スチルカメラ「ザ・コダック」

 別の観点から長尺フィルムの必要性を考えていたのは、1900年前後からめきめきと頭角を現してきたフランスパテ・フレール社でした。同社は1900年代に入るとアメリカに「パテ・エクスチェンジ」社を開設。1905年にアメリカに出現したニッケル・オデオンと呼ぶ映画館向けに西部劇などを作って販売・配給を行っていました。
  そのため、短い映画が飽きられてきたことを敏感にキャッチして危機感を覚え、もっと長い作品を、と考えていました。つまり、映画の製作現場からも長編映画への取り組みが始まっていたのです。

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シャルル・パテ2.JPG●上/パテ兄弟と雄鶏マークの商標 左/シャルル・パテ 

大衆の求めるものと業界の方向性が一致し、長尺フィルムをそのままプリントできる機械が開発されたのが1907年。
  1908年になるとフィルムはようやくイーストマン・コダック社によって現在と同じパーフォレーション(フィルム両脇の穴)付きで販売されるようになり、ここで初めて35ミリ映画のフィルム規格が確立しました。何とそれまでは大手の映画会社は自社でフィルムをつくり、穴を開けていたのでした。

  フィルムが統一規格で生産され始めたことによって、本格的にストーリー性を持つ長編映画が作られ始めました。1907年以降になるとニッケル・オデオンのプログラムからは次第に短編映画は姿を消し、1回の興行が2時間前後になるように数本の作品でプログラムが組まれるようになりました。


●フィルムをめぐるイーストマン・コダック社とパテ・フレール社の確執

こうなるとフィルムは映画業界の生命線となります。1908年、全米のニッケル・オデオンが5,000館、それより上等レベルの映画館が1,000館を超えるまでに増加したことを背景に、イーストマン・コダック社はフィルム・カルテルを形成して映画フィルムの独占を図ります。

それに反旗を翻したのはパテ・フレール社でした。同社は自社に大規模な現像所を持っていたくらいですから技術は優秀です。1910年、販路拡大のためにデュポン社と提携して敵地アメリカにフィルム工場を作り、操業を開始します。「フィルムを制するものは映画界を制する」。ここでもアメリカとフランスの熾烈な企業戦争が展開します。

1907 パテ社現像所.JPG
●パテ・フレール社、フィルム現像工場

その競争の中でイーストマン・コダック社を有利に導いたもの、それは19099月に完成した燃えないフィルムの発明でした。

映画業界では、1897年、パリで起きたフィルム火災に端を発したあのチャリティ・バザールの大惨事がまだ記憶に新しいところでした。それまでのフィルムベースは発火の危険性を持つニトロ(硝酸)セルロース。映画関係者は、あの惨劇を再び繰り返したら映画は危険なものとして社会から葬り去られてしまうだろうという恐れを抱き続けていたので、燃えないフィルムは業界全体の悲願だったのです。それがアセテートベースのフィルムを採用したことによって解消されたのです。


 こうしてイーストマン・コダック社はフィルム製造の首位に立ち、ますます拡大する映画産業の需要を満たすために、1910年後半にはドイツのアグファ社、ベルギーのゲバルト社が参入。世界の映画フィルムメーカーが揃い踏みとなります。 


●シリーズの元祖、連続活劇「ブロンコビリー」

 時代はこのように長編映画に向かって大きく舵を切り始めます。映画づくりの基準が変わったのです。 
 新たな基準となったフィルムの長さは1巻1,000フィート、300メートルでした。時代がようやくウィリアム・ディクスンやウッドヴィル・レイサムが目指した1,000フィートの長時間連続上映を求めだしたのです。これは1秒16コマの手回しで、およそ15分です。

 ところがそれまで17メートルのフィルムを使うように作られていた撮影や映写機材、現像やプリント体制などは、直ちに切り替えることは出来ません。

 その間隙を縫って登場したのが「連続活劇」です。アメリカの新参エッサネー社が考えたのは、お得意の西部劇をシリーズ展開することでした。一人のヒーローの活躍を短編の続き物として製作し、毎週新作を公開。それによって観客のリピート効果を高めようというものです。

6.JPG ブロンコビリーアンダースン.png
●1903年「大列車強盗」で悪漢に射殺される役を演じたマックス・アンダースン

 シリーズタイトルは「ブロンコビリー」。主人公は例のエディスン社の「大列車強盗」でピストルで撃たれる乗客を演じたブロンコビリー・マックス・アンダースン。今はエッサネー社の創始者である彼が、自分のニックネームで主役を演じた訳ですが、これがアメリカで大当たり。まさにアメリカン・ドリーム。1907年に始まったシリーズは1915年まで400本も作られたといいますから驚きですね。いやいや、人気のほどもそうですが、1週間1作というその製作スピードです。時代を味方にするということは、これほどまでにパワーを倍増させてくれるものなんですね。


●安易に人は殺さない正義のヒーロー、ブロンコ・ビリー

 
 活劇映画ではのろまな編集はブーイング。てきぱきとしたカツトつなぎがいのちです。アクション映画がどれだけ編集技術を高めたかは計り知れません。欧米の映画館をにぎわす中篇映画は、手際のいいカットつなぎで、名作とされた「大列車強盗」をたちまち過去のものにしてしまうのです。

 この連続活劇の手法は、1913年以降フランスで大きく開花します。有名な作品は怪盗ものの競作となったゴーモン社の「ファントマ」とエクレール社の「ジゴマ」。特に日本では、「ジゴマ」の手口を真似た犯罪が続出。時の内務大臣・原敬が上映禁止のお触れを出すなど社会問題を引き起こすほどの人気を呼んだそうですが、現在のこのブログの進捗段階ではまだ先の話。けれども、この先で2作に触れることはありませんので、ここに写真だけ掲載しておきましょう。

1913 ファントマ.JPG
「ファントマ」1913  フランスでは何度もリメイクされている人気キャラクター。

1911 ジゴマ.JPG「ジゴマ」1911

 とにかくこうした短編連続活劇が本格長編映画登場までの隙間を埋める役割を果たし、「映画は面白い」という観客の興味をつないでくれたのでした。  
                          
                                 つづく







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コメント 15

さる1号

35mmの規格、こうやってできたんだ
知らなかったです
毎週新しい作品を作り上げる連続活劇
現場は凄くハイテンションだったでしょうねぇ
ジコマ、見てみたいな
レンタルでないかなぁ
by さる1号 (2015-06-20 07:52) 

sig

さる1号さん、こんにちは。
35ミリフィルムについては過去記事に推論を書きましたが、イーストマンが開発したスチルカメラが70ミリのフィルムを使う仕様だったので、映画用はその半分にしたとか諸説あるようです。
http://moviechronicle.blog.so-net.ne.jp/2009-08-12
ジゴマは私も全く見ていません。動画の一部でも見つかったら貼り付けましょう。
by sig (2015-06-20 08:43) 

うさ

こんばんは!

>活劇映画ではのろまな編集はブーイング。てきぱきとしたカツトつなぎがいのちです。

これ、すごく響きます^^ 動画作りでも、もたもたした展開だと途中で見たくなくなってきますものね。今の時代は思う存分長い映画は作れるようになったと思います(笑)が、その分、内容や展開に何を盛り込んでいくのか…というあたり、発想力が大切なってくるのでしょうか…。
by うさ (2015-06-21 01:17) 

sig

うささん、こんにちは。
昔はカメラ1台で撮っていましたから、早いカットつなぎはどちらかというと苦手。今は何台ものカメラで一つのシーンを連続して撮影しますから、カメラの数の素材(フィルム)をどんなふうにでも切り取って編集できるんですよね。2時間のアメリカ映画には、昔なら3時間分の話の展開が詰まっていると思います。それだけ展開が早い訳で、だから、日本映画の「静」が尊ばれたりするのでしょうか。
by sig (2015-06-21 09:01) 

響

1分間同じシーンて
今だときつい時間ですね。
by (2015-06-21 10:13) 

sig

響さん、こんばんは。
ほんとうに、ですよね。今のアメリカのアクションなどでは、1カット0.5秒(12コマ)どころか、数コマというものまでありますからね。まさに目にもとまらぬカットつなぎ。瞬きをしているひまもありません。でも、それを見分けられるのは、これまでにさんざん映画を観て、慣らされたからなんです。昔の人なら付いていけずに目を回してしまうでしょうね。
by sig (2015-06-21 19:06) 

green_blue_sky

デジタル技術でもフィルム世界を踏襲していますからね。
映像世界は面白い~
by green_blue_sky (2015-06-21 22:48) 

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