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まとめ 虚像から実像への希求 ブログトップ

079 遥かなり。タイムマシン。 [まとめ 虚像から実像への希求]

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●あなたもスクリーンの中へ、と誘う「大列車強盗」1903 の悪漢。


まとめ、あるいは・・・遥かなり、タイムマシン。

「歴史を学ぶ」とは、過去の経緯を展望・分析することにより現在の立ち位置を把握し、未来を予測することだといわれます。

「人はなぜ、このようなもの(映画)を考え出したのだろう」。
時系列的ではあっても体系的ではなく、作家論でも作品論でもない。映画史
に対する私が幼児期に抱いた極めて初歩的な疑問に端を発したこのブログの展開は、ご覧いただいた映画前史から映画誕生に至る技術史的物語の中で完結しました。

誤解を恐れずに結論を極言すれば、人は太古、影という〈分身〉を認識したとき以来、無意識のうちにその分身を、言葉通り血肉を備えた身代わり〈コピー人間〉として実在させたいと考えたのではないか、ということです。それは、人の生命が無限ではないという認識と無関係ではありません。


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●バーチャルはまず奥行き(3D)を得るところから始まった。19世紀初め吏家族写真

19世紀後半に写真技術が開発されると、洋の東西を問わず、研究者はこぞってまず立体写真を考え、次に動く写真を生み出しました。

写真が動けばすぐにそれを着色し、更に声を付けようと考えました。そしてそれらは極めて当然のことのように行われたのでした。それは、よりリアルな、人のコピーをと願う行為でなくて何でしょう。

 更にこの動きが世界共通であることを考えると、人々が無意識に映画に求める〈分身の創出=虚像の実像化〉は、人間の本性に根差した根源的な願望であると言い換えることはできないでしょうか。
 
あのトーマス・エディスンでさえ、晩年は霊魂の研究に打ち込み、自分の発明であるフォノグラフ(蓄音器)とヴァイタスコープ(映写機)を用いた死者の復活(もちろん疑似的な)を、真摯に研究していたといわれます。

 20世紀は、歴史上初めて「動く写真」で記録された時代といわれる通り、映画の技術が加速度的に進んだ時代でした。カラー映画が実現すると、人物以外にその自然環境や社会環境、そこで発生する出来事をもリアルに描くためにワイドスクリーンが開発されました。そして、その延長線上にコンピュータが加わり、CGによる現実感、存在感が飛躍的に高まりました。

21世紀の現在は、更に進化した3DCGにより、情景などの環境描写はもとより、人物の実在感が最高レベルに達するに至りました。


 このように「映画」は、最先端のテクノロジーと芸術が融合した稀有なメディアというに留まらず、環境ぐるみでの人の状況のコピーも不可能ではない、極めて精細な描写力を持つようになりました。
これまで「疑似体験」と呼ばれてきたことが、驚異的なビジュアルの進化により、より実体験に近いものへと高まっていることは、最近の宇宙映画やアクション映画などに強く感じられるところです。

こうした過程を展望すると、映画は誕生した時点から、人の環境をも含めた現実の時空間の複製(コピー)を目指しているのだと解釈したくなるのは間違いでしょうか。それこそが、時空間を自在に超越可能なタイムマシン実現に向けての大前提になるはずなのです。
 つまり、ここで言うタイムマシンのイメージは、超高度な先端技術によって人工的に構築された、現在~過去~未来に及ぶ幾多の
情景のコピー環境を言い、人々は体感したい情景をセレクトしてその時空間を現実そのままの臨場感で疑似体験するという手法であり、通常、SF小説やSF映画で示されるイメージとは異なります。

 映画は疑似体験であるといわれるように、どんなに危険な状況下でも、安全に安心して観ていられるという特質があります。これは、映画はシミュレーションであるということに他なりません。
 それはパニック映画やアクション映画に限らず、恋愛映画においても、男女が置かれた環境によってどのように対応し反応するかというシミュレーションと見ることができます。
 迫真力を増大させたこれからの映画は、人物・環境ともに、描かれた情景・状況をあたかも現実そのもののように立体化し、これまで観客(客体)として観覧するだけだった私たちをその情景の中に誘い込み、物語を体験する人物そのもの(主体)として実際に受け入れる環境を備えようとしているのです。


タイムマシンの実現には、解決しなければならない課題がいくつも横たわっています。「五感」…つまり、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚のうち、映画は未だに視聴覚と呼ばれる二つの分野しかクリアしていません。
 
つまり、現時点の映画は、「タイムマシン創世」とブログタイトルに示した通り、現在は蠢動期に他ならないのです。映画は誕生以来120年を経て、ようやくタイムマシン開発の緒についたにすぎないのです。


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●最大級スクリーンで臨場感No.1
を誇るIMAXによる「ハッブル3D」2010

タイムマシンで必要とされる環境がバーチャル・リアリティ(疑似体験環境)です。その研究開発も多方面で進められています。バーチャルとは、「虚像の限りない実像化」です。自分自身がヒーローとなってアバター(分身)を意のままに操り、バーチャルな世界で活躍できるゲームの世界や、テーマパークにおける種々の体験型ライドがその先鞭を切りました。

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●バーチャルの世界を分かりやすく示してくれた「アバター」2009

最近では4DXの名で登場した新しい体感シアターも一翼を担っています。4DXシステムの映画館では映画のシーンに連動して座席が揺れ動くだけでなく、霧や雨が降り注ぎ、花の香りまで漂ってきます。これらの試みはすべて、将来的にタイムマシンにつながるものです。


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●フロリダ「EPCOT」にある唯一の完璧なオーディオ・アニマトロ二クスといわれるリンカーン像 1982

ウォルト・ディズニーは、自分が生み出した虚像であるフィルム上のキャラクターたちを、実在感のある立体像にしたかったはずです。でも、時代はそこまで到達していなかった。結果的に着ぐるみは当たりましたが、本当の狙いを見せたかった。そこで、ファクトリーオートメーションとして工場に導入され始めたばかりのコンピュータを使って、自らオーディオ・アニマトロ二クスと命名した極めて精巧なリンカーン大統領の〈分身〉を作り上げたのでした。
 
現在存命なら、最先端の技術を生かして「カリブの海賊」や「インディー・ジョーンズ・アドベンチャー」、そして最新作映画「トゥモロー・ランド」をバーチャルリアリティ・シアターとして作り変えるかもしれません。

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このようにタイムマシンを前提とするバーチャルな映像空間を考えると、「観客」という概念も変わってくるのではないでしょうか。


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●どんなに危険がリアルでも、安全であることは守られなければならない。「エクソダス」2014


 ここで、このブログの最初の写真を思い出していただきたいのです。それはエディスン社製作による「大列車強盗」のラストに付けられたおまけのカット。列車強盗の首領が、こともあろうに観客に向かって拳銃を発射するあのカットです。
 当時の観客の度肝を抜いたあの驚愕のカットは、実は「観客」が「観客」でない立場に急に置かれた、まさに「主客転倒」によるとまどいだったのです。

このカットは実は、虚像である強盗が、実像である観客をスクリーンの中に誘っているのです。「そんなとこに座ってないで、スクリーンのこっちに来てみろよ。もっとすごい世界が待ってるぜ!」。これこそバーチャル・リアリティであり、時空間を飛躍するタイムマシンの入り口なのではないでしょうか。
 映画誕生後即座にこのような表現が発想されたことの驚き。というより、その発想が当たり前のように行われたという虚構と現実の近似性に〈コピーの世界〉への大きな可能性を感じると同時に、「そんなことが体験できる日が来るのを待ってるよ」との激励を受けているような気がするのです。


 これまでは、「この10年ですごい進歩だね」と、往々にして10年ひと昔の単位で技術革新が語られてきました。けれども映画はおよそ100年でタイムマシンの緒についたばかり。映画がどこへ向かおうとしているかを掴むには、100年を単位に展望することが必要かもしれません。このブログが太古から物語を始め、18世紀、19世紀、20世紀と話を進めてきた理由はそこにあります。

 この先は映画だけでは実現不可能です。他の分野と提携したり、新しい技術をどんどん取り込んでいく必要があります。「映画」という狭いイメージではなく、「映像」という広い概念のもとに、当分はコンピュータによるデジタル技術を基軸に(将来はさらに進化した技術が生まれるでしょう)、人工知能、ロボット工学、バイオテクノロジーなど、総合的な科学技術の極めて高度な融合を待たなければなりません。

  映画誕
生から一っ跳びに未来の話に飛んでしまいましたが、次の100年は、虚像であることを忘れてしまいそうに本物そっくりな女性の手を取って、その手が温かいか冷たいかを知り、着衣の素材も感じられる〈触感〉を持つ映像の時代へ向かうでしょう。

 いつの時代においても、常に時代
の最先端技術を取り込んで発達してきた映像の世界ですが、〈分身の創出=虚像の実像化〉は更にその先。そしてタイムマシンは更に、その遥か彼方にあると思われます。


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●「華麗なるギャッツビー」2013 の邸宅へ、どなたもどうぞ。



★映画関連では別ブログで下記のシリーズを掲載しております。
 「
ディズニー長編アニメ再発見」にもぜひお立ち寄りください。
   http://fcm.blog.so-net.ne.jp/archive/c45409934-1



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